死にがいを求めて生きているの 朝井リョウ

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死にがいを求めて生きているの 朝井リョウ

死にがいを求めて生きているの(文庫本2022/単行本2019) 著:朝井リョウ 前述の『螺旋プロジェクト』の内の一冊。 伊坂さんの作品のポップな書き味とは変わって、一貫してずっしり重い、暗い話が最後まで続く。それだけに螺旋プロジェクトの共通設定みたいなのは少し設定として浮いているかなとは思った。 ただ後書きを読むと”対立”を描くというテーマに苦心して、現代における対立とは何かを考えた末にできた小説だという趣旨の記載があった。 ”あなたはあなたのままでいい、生きているだけでいいんだよという言葉では救いきれない何かが、今作だけでなくその後書いた何作かの小説に影響している気がします” だからやっぱり、螺旋プロジェクトの企画も影響して生まれた価値みたいなものが確かにあると思う。 今作も、『正欲』も、エンターテイメントというよりは現代社会ってこういうものではなかろうかという提示の側面が強くて、先の『暇と退屈の倫理学』のような哲学の本ともよく似ていると思う。 個人的に生きているだけでいいなんてとても思えない暗い人生を歩んでいることもあって、面白いとはちょっと違う、大事な物語だと思える。何かのために、誰かのためにという正解の倫理からどうしても遠い人間が生きる意味を探すためのヒントになると思うのだ。
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