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『あなたを見ているとイライラするわ。罪悪感が強くて自己評価が低い、簡単に他人から見下される女。同じ女だから、余計に腹が立つ』
悔しいけれど当たっている。
ツカサは泣きそうな気持ちで、顔を覆った。
きっと丈流にとってもツカサは、言うことをよく聞く都合の良い女だったに違いない。
それを愛だと勘違いしていただけだ、とツカサは涙を浮かべる。
「俺のことも、もう嫌になった?」
「そ、それは……」
丈流の手が伸びてきて、ツカサの頬に触れた。
そっと親指が、涙を拭う。
嫌いになりたい。
もう私を振り回さないで。
ツカサは「やめて」と、丈流の手を払い除けた。
「俺が最上の人間だということは、今さら変えられない。ツカサだって、それを分かって俺と結婚したんだろ?」
「そうだけど……どうして、私なんか……丈流にふさわしい人は他にいくらでもいるのに」
「ふさわしいって何? 俺はツカサがいいって言ってるのに?」
優しく抱き寄せられ、ツカサは抵抗する力を奪われていく。
「大丈夫だよ。最上の人間が何と言おうと、俺はツカサの味方だ。俺が守るから」
しかし、整った丈流の顔立ちには、しっかりと晴美の面影があった。
『丈流だって、ただの飼い犬じゃない。あなたと結婚したのは、そうね、魔物へのささやかな反抗心かしら。愛されていると思った? 男は、愛の意味なんて、これっぽっちも分かっていないわ。残念ね』
晴美の言葉を思い出し、ツカサは丈流の胸を押し返す。
「守ってくれなくてもいい。そうやって私から自由を奪わないで」
「ツカサ、何言ってるんだよ?」
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