◇予期せぬ真実

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「どうして隠してたの? おかしいよ、こんなの」  ツカサは丈流を問い詰める。 「言ったところで、怪しまれるだろ? ただでさえ、ツカサは記憶を失くして、疑心暗鬼になっているんだから。俺はただ、ツカサが心配で……」 「私のほうがおかしいって言っているの?」  ツカサの言葉に、ぴくり、と丈流の眉が動く。 「そうじゃない。おかしいのは……たぶん、俺だ」  すると、丈流の顔から、柔らかな笑みがすっと消えていった。 「ツカサはきっと知らない。俺の愛は……ツカサが思うよりずっと、重いんだ」 「えっ……?」  丈流の深い色の瞳に捕らえられ、ツカサは身動きできなくなる。  二人に、愛は残っているのだろうか。  一グラムでもいいから、残っていて。  ツカサは咄嗟に願ってしまった。  どんな丈流でも、嫌いになれそうにない。  そんな自分に呆れながらも、偽ることはできない。  消えた記憶に何があろうと、残った記憶の中にある丈流への思いは揺らがない。  集合写真の隅っこに映っているような、地味で目立たないツカサを見つけてくれた。  そして、心ごと抱きしめてくれた。  一生一緒にいようと誓って、毎日のように優しく髪を撫でてくれた。  人を好きになるのに、たいした理由はいらないと知った。  ただそばにいてくれるだけで、生きる意味と同等だった。  じんわりと瞼が熱を帯びていくのを感じる。  真実を知るのが怖い。丈流と離れたくない。  だけど、この子を守れるのは自分だけ。真実から目をそむけてはいけない。  相反する気持ちに、ツカサの心はかき乱される。 「ツカサ、おいで。ゆっくり話そう」  丈流がツカサの二の腕を掴んだ。 「嫌、離して」  言葉では拒否するが、体が動かない。 「落ち着いて。俺の話を聞いてほしい」 「今は聞きたくない」  知りたい気持ちと、知りたくない気持ちが、せめぎ合う。  知ってしまったら、きっと引き返せない。  丈流や子供と一緒にいられる幸せな未来を、夢見ることさえ許されないのではないか。 「何も聞きたくない」  混乱するツカサは、両耳を手で塞ぎ頭を左右に振った。 「ツカサ、とにかく座って」 「……私……もう……」  立っていられない――急に目の前が真っ白になり、体の力が抜けていく。  ツカサは膝から崩れ落ちていった。
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