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「丈流は……歪んでなんか……」
「本当にそう言える? 俺は他人を支配したいだけだ。ツカサのこともこうやって」
ツカサの手首を掴み、丈流は強引に自分のほうへと引き寄せる。
「鳥籠に入れておきたいだけなんだよ」
深い色の瞳は、ツカサの心を捕らえようとしていた。
「や、やめて……」
「どうして? いつまでも俺のためにだけ鳴いていてよ」
「違う、こんなの」
「違わないよ。これが、俺の愛なんだから」
「私の気持ちはどうなるの?」
「俺はね、最上家をめちゃくちゃにしてやりたいんだ。最上家を手に入れて、全部壊す。そうすれば自由になれるだろう? それから二人で幸せになればいい。ツカサはいい子だから、待てるよね?」
丈流はツカサの黒髪をゆっくりと撫でた。震えてしまいそうなほど、丁寧に。
それでもツカサは、丈流の言葉の真の意味を探ろうとした。
いくらなんでも身勝手すぎる。
丈流はどうして最上家をそこまで憎んでいるのだろう。
「丈流のご両親はどうなるの? 伯父様はどうなるの? 壊すって、会社は? 働いている社員はどうなるの?」
丈流を非道な人間だとはどうしても思いたくない。
冗談だよ、と笑ってほしかった。
しかし、ツカサの期待はあっさりと裏切られる。
「さあ、どうなるんだろう。楽しみだな」
愉快そうに、丈流は言うのだった。
冷ややかな眼光に、本気だと知る。
咄嗟にツカサは、丈流の手を振りほどいた。
「私は、そんな丈流なら、待たない。待ちたくない!」
そして、毅然として告げるのだ。
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