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「準決勝惜しかったね」
「ああ。相手のサーブがすごい良かった」
「結局、あの人らが優勝したもんね」
「県大会行ったらまた当たるかもしれん……今度は勝てるように頑張るわ」
それでも今日の結果には満足しているようで、奏多の顔は穏やかだった。
「あ、そうだ。今日は車だから荷物いっぱい持ってこれたからね、これ、坂口くんや他の人と食べて」
「何? これ」
「凄い美味しいカステラなんよ。疲れたから甘いもの欲しいと思って。ちゃんと個包装になってるからみんなに配って」
「わ、サンキュ。坂口も喜ぶわ」
遠くの方で奏多を待ってる坂口くんの姿が見える。スマホをいじりながらじっと待ってて、健気。
「じゃあ明日、学校で会おうね」
「あ、車まで送るよ。お母さんにもう一度挨拶したいし」
昨日の今日だからちょっと神経質になってるのかな。駐車場はすぐそこだから危ないことなんてないんだけど。でも嬉しい。
車が駐車場を出るまで見送ってくれた奏多をバックミラーで見ながら母が呟く。
「いい子だったわねえ、奏多くん。イケメンだし」
「もう、お母さんそればっか」
母からの奏多への褒め言葉を聞きながら運動公園を後にした。私は今日が幸せな一日だったことに感謝して目を閉じた。
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