5 嬉しい借り物競争

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 そしてリレー大会当日。抜けるような青い空の下、朝の応援合戦で幕を開けた。  私たち青雲グループは青いTシャツに身を包み、大声でグループ歌を叫ぶように歌った。紅蓮グループのワカも、赤いTシャツで元気よく歌っているのが見える。 (今日は最高の一日になりそうだなぁ)  キラキラ輝く空、眩しい陽射し、みんなの笑顔。青春(アオハル)ってこんな日のことなんだろう。  競技が始まると、選手の応援で大忙しだ。 「俵担ぎ競走、一位は青雲!」  放送部のアナウンスにうおーっと盛り上がり、メガホンを打ち鳴らして喜び合う。 「有紗〜玉入れ頑張ったよう」  玉入れが終わり、真衣子と美佳がはしゃぎながら戻って来た。 「見た見た! 二人ともめっちゃ頑張っとった! 偉いよー」  二人をハグして迎える。 「次は有紗やね。借り物競走頑張って! すぐにこっち来て何がいるか言うんよ? 眼鏡とか帽子とかさ」 「うん、よろしく! 真っ先に走ってくるからね!」  借り物競走の選手が呼ばれ、私も整列して入場した。私はそんなに瞬足ではないけれど、短距離ならまあまあいけると思う。絶対一位を取ってグループの得点に貢献したい。やる気充分でスタートラインに立った。  スタートのピストルがパァンと鳴り、借り物が書かれた紙のところまでは一番に着いた。一枚を拾い上げ、走りながら開いて中を見る。 (あっ……どうしよう⁈ これ、どうしたらいい? どう呼びかけたらすぐに反応してもらえるかな)  私はクラスのみんながいるところへ急いで向かった。全員が私に注目しているのがわかる。そして、その中で急にフォーカスが当たったように、山岸くんの顔が浮かび上がった。こっちを向いていて、目が合っている。私は呼びかける言葉を決めた。 「山岸くん!!」  彼に向かって右手を伸ばす。応えてくれるだろうか? お願い、応えて欲しい。  山岸くんが弾かれたように立ち上がり、飛び出して来るのが見えた。 「和辻さん!」  山岸くんは私の手首を掴んで走り出した。彼のスピードに引っ張られ、私の体も嘘みたいに速く動いていく。前を向いてゴールを見据えて走る彼の横顔をいつまでも見ていたかったけど、あっという間にゴールテープを切っていた。 「青雲が一位です!」  放送部が実況している。一位の旗を持った係が走ってきて、借り物を書いてある紙を確認した。 「『運動部の男子』で合ってますか?」 「はい。テニス部です」  係はオッケーという合図を本部席に送り、順位が承認された。クラスのみんなが喜んでるのが見える。 「ありがとう、山岸くん! めっちゃ速かったー! 私まで速く走れた気がするよ」 「和辻さんホントはもっと速いんやない? 充分ついてきてたやん」 「興奮してたからかな〜。アドレナリン出た感じ!」 「名前呼んでくれたからすぐ出てこれたよ。そうじゃなかったら男子同士で『誰が行く?』って牽制し合うロスが生まれとったやろ」 「うん、そう思って山岸くんを指名させてもらったんよ。一位取れて良かった」  一緒に体育座りで待機している間、ずっと話せるのが嬉しくて私ははしゃいでいた。手首を掴まれた嬉しさもあったし。  ほんとは、もしかして手を繋いでくれるかな? と一瞬期待したけど、やっぱり手首で良かった。  だってそんなことになってたら、恥ずかしくて手汗がひどいことになってただろうから。
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