6 誘導尋問とガラガラ声

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 表彰式が終わり、それぞれのクラスに戻ると自然な流れで集合写真を撮ることになった。黒板を背に、全員でピース。山岸くんは男子の端っこにいたので近くにはいけなかったけど、同じ写真に収まるという目標はこれで達成できた。 「じゃあクラスのグループラインに写真載せておくから!」  尾崎君の言葉で解散となり、座席に戻ってきた山岸君に私は声をかけた。 「山岸君すごい速かったね。みんなの応援聞えた?」 (ああ、ガラガラ声なの忘れてた! 長州さんみたいな声で話し掛けちゃったよ) 「和辻さん、すごい声つぶれとるね」  山岸君は目を丸くして驚いた顔で言った。 「そうなんよ。最後のリレーでつぶれました」 「応援ありがとう。和辻さんの声、すげー聞こえた」 「え……」  私の声がわかったの? 嬉しくて言葉が出ない私に「じゃあ」と手を上げて彼は部活に向かった。 (やっぱり好き。大好き。こんな一言だけで、幸せで胸いっぱいになる)  いつか山岸君の特別になりたい。なれたらいいな。それが私の願いになった。
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