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25 奏多Side 3
それからさらに事態は悪くなった。女子だけでなく男子からも無視されるようになったし、他の中学にまで噂がばら撒かれた。俺はもうどうでもいいと思い、何もせずに放っておいた。
悪いことは重なるもので、その頃、入退院を繰り返していた母が死んだ。母の病気がわかってからこの町に引っ越し、一進一退を繰り返しながら頑張ってくれていた母。家に戻れた時にはいつも優しく笑って俺の話を聞いてくれていた。
そんな母の死は俺にとって辛く悲しいものだった。だが誰かに聞いてもらいたくとも凛々花たちの報復が怖くて俺と喋ってくれる人は誰もいない。孤独だった。
だからこそ、テニスと勉強に打ち込んだ。あと半年耐えれば新しい環境に変わる。それまでの我慢だ。そう信じて受験を乗り越え、志望校に受かることが出来た。県でも有数の進学校だ。
卒業式の翌日が公立の合格発表だった。
一人で発表を見に行き、結果に安堵して帰宅したちょうどその時、凛々花も帰って来たようで門の前で出くわしてしまった。
そのまま、家に入ろうとした俺を凛々花が呼び止める。
「山岸。合格してたん?」
ずっと無視していたのに突然話しかけてきたので驚いたが、平静を装って短い返事をする。
「ああ」
「あっそ。良かったやん。私は落ちたから滑り止め行くわ。まあどうせ、高校でも遊びたかったし、ちょうどええ」
「そっか」
まだ話があるのだろうか。凛々花は家に入ろうとしない。俺はじゃあ、と言って立ち去ろうとした。
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