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「あ、山岸。あのさー」
昨日の卒業式までずっと無視していたくせに、今さら何なんだ。ちょっとイラッとした俺は少し顔に出してしまったかもしれない。
「何?」
「いや、えっと。今からさ、うちで卒業パーティーやるんよ。アカリやレイナ、ケント、タツローとか他にもたくさん来る。山岸も来ん?」
俺は呆れてしまった。そいつらはいつも凛々花と一緒にいたグループで、俺を無視したりからかったりしていた奴らだ。卒業してまで、まだ虐げようとしているのか。
「悪いけど俺はもう中学の奴らとは付き合わないから」
強めにそう言うと凛々花は一瞬悲しそうな顔をして、それからいつものように強気な言葉を発した。
「あっそう! せっかく仲間に入れてやろうと思ったのに可愛げないわ! もう知らん! あんたなんかずっと拗ねたまんまでおったらええ。同窓会も成人式も絶対に来んなよ!」
ガシャンと大きな音で門を開けると、同じく大きな音を立てて閉め、ドタドタと玄関へ姿を消した。
(何なんだ、まったく……)
それから春休み中は毎日のように凛々花の部屋から大騒ぎする声が聞こえた。昼はどこかに遊びに行き、夜は凛々花の家で騒ぐのがお決まりのようだ。時々、男のふざけた声で
「山岸ぃ〜! 顔を直して来いよ〜」
とこっちに向けて叫ぶこともあった。キャハハと笑う女子たちの声。イライラする。
(高校に行っても女子と話すなんて出来そうもないな。嫌な思いばかりしたから……)
とにかくテニスと勉強をしっかりやろう。友達なんて出来なくてもいい。高校を卒業したら絶対に他県の大学に進学してここから離れてやる。隣の凛々花とずっと顔を合わせるなんて御免だ。
そして入学式の日、隣の席になったのが――和辻有紗だった。
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