73人が本棚に入れています
本棚に追加
ーー凛々花のことを話し終わると、坂口はうーん、なるほど、と言った。
「なんかしら拗らせてるんだねぇ。プライドが高すぎて素直になれんってとこかな。ま、彼女には彼女なりの理由があるんかもしれんけど、相手にしないほうがいいよ、山岸」
「もちろん。ただ、あいつが有紗に」
「んん? 有紗? もう名前で呼ぶようになったんか〜!」
「ちょっと坂口、今そこ突っ込むとこか⁈」
「いやいや、これは突っ込んどかなきゃ。で、和辻さんに何?」
「や、あいつがさ。有紗に何かするんじゃないかって、それが心配で」
「うーん、それは心配しなくても大丈夫やない? まさか暴力振るうってことはないでしょ」
「そうだな。まあそこまではない……か。でも有紗にこの件はちゃんと話しておかないといかんな」
「そうやね。それがいいかも。何も知らない和辻さんにいきなり接触されたら困るよね」
「ああ。ありがとな、坂口。いろいろ聞いてくれて」
坂口はユラユラと身体を揺らして笑った。
「じゃあそろそろお暇しよーかなあ。明日も試合だし」
「そうやな。試合も近いし頑張らなきゃな」
「ダブルス、絶対県大会に行こうな」
いつも笑っている坂口が、その時だけは真剣な目をしていた。もちろん俺も同じ気持ちだ。
テニスも恋も友情も充実してる。今が人生で一番楽しい、と俺は思った。
最初のコメントを投稿しよう!