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そして月曜日。私は浮かれ気分で登校していた。
「おはよう」
教室に入るとクラスの女子が集まってくる。
「有紗、山岸くんと引っ付いたんやって〜?」
「あー、うん、そうなんだ。えへ」
「二人、絶対両想いやと思てたもん、お似合いよ〜。おめでと! そういえばね、他にもカップルできたんよ」
なんと体育祭で私たちを含めてクラス内に4組もカップルが増えたらしい。どうりで、なんだか今朝は幸せオーラが飛び交っている気がする。
そこへ美佳がバタバタと入ってきた。
「おはよ! 有紗、ちょっとちょっと」
「おはよー美佳。どしたん?」
美佳は私の腕を引っ張って教室の後ろへ連れて行く。
「あのさ。華道部に緑中の子がいるって言うてたやん。その子から山岸くんってモラハラ男やから、彼氏にするなら気をつけた方がいいって有紗に言ってあげて、て言われたんよ」
「えええ? 全然そんなことないよ! 何を根拠に」
「でしょ? 私も変やなと思ってその子に聞き返したんよ。誰がそんなことを、って。そしたら、中学の友達から回ってきたらしい」
「中学の……」
(もう高校に入学して半年経つのに、そんな噂が立つなんて変。誰かがわざと流してる気がする)
「美佳、そんなの絶対間違いよ。だから信じんとって」
「うん、私はわかっとるよ。ずっと二人のこと見てきたもん。だけど、違うクラスだったら信じてしまう人がおるかもしれん」
「確かに……前の噂だって、誤解だってわかってるのはうちのクラスの人間だけやしね。そんな噂が二つも回ってたら信じる可能性高いやろ。ひどいな……」
「山岸くんはこの噂知っとるんやろか」
「昨夜はそんなこと言よらんかった」
「おおっ? 毎晩連絡し合ってるんやね、らぶらぶ~」
私の暗い気持ちを和らげるようにおどけてくれる美佳。
「とにかく。そんな噂が間違いだって、私が証明する。私が幸せだったらそんなの消えていくはずやん」
「うん、そうやね。私も否定して回るよ。まったく、誰なんだろね、出処は」
この後登校してきた奈津と真衣子はこの噂をまだ聞いていなかったらしく、ひどく憤慨していた。
だけど……他のクラス、特に紫苑グループではこの時既に噂が回っていたのだ。
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