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ちょうどその時、紫苑グループの男子が通りかかった。奏多と同じ授業を選択している人たちだ。
「おっ、山岸、彼女と弁当か? ええなぁ」
「仲良さそうで羨ましー。なんか変な噂回ってきてたけど、気にすんなよ! あんなん、誰も信じとらんから」
「ああ、サンキュ。ところでさ、その噂どっから出たかわかるか?」
「えー、なんか昨日のグループLIMEで出たんよなぁ。ちょい待ち」
その人はスマホをスクロールしてトークを探してくれた。
「ああ、あった。これやな。『須藤から聞いたんやけど7組の山岸くんってめっちゃモラハラで嫌な奴やから彼氏にしないほうがいいって。ホント?』って、女子が訊いてる」
「やっぱり須藤か……」
「須藤って前にも山岸の中学時代の噂をクラスで話してたことがあってさあ。あいつ、逆に山岸のこと好きなんじゃね?」
「そーそー。他の女子が近づかないようにしとる感じ、するよな」
ということはやっぱり凛々花さんに協力してるということだろう。
「俺らもさ、そんな噂信じとる奴がおったら否定しとくから。ていうか、めっちゃ可愛い彼女でほんま羨ましい!」
(えぇ……可愛いとか言われた……照れる)
私が赤くなってるのを見た奏多が、私の姿を隠すようにして言った。
「ええやろ。俺の彼女」
するとみんなは口をポカンと開けてから奏多に突っ込み始めた。
「うわー、なんだこいつ、腹立つー!」
「そういうのがモラハラだろ! やっぱモラハラって言ってやる!」
みんなで笑いながら、やっぱりこんな噂は気にしなくていいと思った。奏多はもう一人じゃない。こんな風に信じてくれる友達がたくさんいるんだから。
教室に戻った私を奈津たちが迎えた。
「もう噂なんか気にすることないよ、有紗。あんなの嘘やってみんなに広めておいたけん。女子テニス部の人脈、舐めんなよっ」
「犯人は須藤さんらしいやん〜。もうあの人ヤバい奴認定されよるから、今後は何言っても信じてもらえんのやない?」
奈津たちも須藤さんに辿り着いていたみたいだ。
「ありがと、みんな。こんな噂、気にせずに仲良く付き合っていくことにするよ」
「そうそう! それが相手には一番ダメージやもんね」
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