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それから時は過ぎ、ついに初デートの日がやってきた。
奏多は午前中の練習が終わってからいったん家に帰って着替えてくるという。
「汗が臭過ぎて長時間横にいられない」んだそうだ。そのくらい、気にしないのに。
とはいえ、私も初めてのデートに何を着て行こうかと頭を悩ませていた。とりあえず映画を観に行くことになったので、皴にならない服で、温度調節もしやすいもの。
(あー、なんかちょうどいい服がない! しかも9月の終わりだからあまり夏っぽいのもだめだし……)
結局、母に打ち明けて可愛いワンピを買ってもらい、元から持っていたショート丈のジャケットを合わせることにした。
「頑張りすぎてないかな?」
「大丈夫よ~ちゃんと高校生らしい恰好だと思うわよ。楽しんでらっしゃいね♪」
母は私に彼氏ができたことがすごく嬉しいみたいだ。満面の笑みで送り出してくれた。
待ち合わせは中央駅。そこから歩いて映画館まで行く予定。私の乗った電車が着く時間は知らせてあるから、きっと奏多はもう来てるはず。
改札を抜けて辺りを見回していると、後ろからイケボが囁いた。
「お姉さんお一人ですか?」
「ええ、一人ですけど」
「じゃあ僕と映画に行きませんか」
「喜んで!」
今日の奏は私服! 制服とテニスウェア以外の服装を初めて見る。……だめだ、好みにドンピシャで見ていられない。きれいめのカジュアルっていうのかな。白Tにベージュのオープンカラーシャツを重ね、黒のパンツを合わせてる。足元は黒のスニーカー。
「奏多、かっこいい……」
「え、ちょっと待って有紗、恥ずかしいんだけど……」
奏多が顔を赤くして手で鼻をこする。そして小さい声でつぶやいた。
「有紗こそ、めっちゃ可愛い……大人っぽくて最初わからなかった」
えへへ、と見つめ合った私たち。それから手を繋いで映画館へ向かった。
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