30新人戦

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 そしてついに奏多の試合の時間。奏多がエントリーしているのは坂口くんとのダブルス。ドキドキしながら試合を見守った。 (あ……これは大丈夫かも)  しばらく見ればわかった。奏多たちのほうが断然上手い。その試合は難なく勝ち、次に進むことになった。  その後も順調に勝ち進み、夕方に最後の試合を終えた時にはベスト8まで上がっていた。 (やったー! 奏多、坂口くん、二人とも凄い! これで、明日も試合が続くんだよね。あと3回勝てば……優勝⁈)  明日の分の材料もちゃんと買ってある。頑張って作らなきゃな。  試合を終えた奏多と坂口くんがこちらに走ってきた。 「有紗! 有紗の弁当のおかげで勝ったよ。めっちゃ美味かった」 「和辻さ〜ん、僕もちょっぴりお裾分けしてもらったんよ〜。おかげでいいサーブ打てました」 「何言よん、二人の実力やん。おめでとう! 明日も作ってくるから頑張ってね」 「ああ、ここまで来たら優勝目指すつもりや。な、坂口」 「そうそう。一年生で優勝、かっこええやん〜」  二人ともすごく嬉しそうだ。 「あ、俺たちもう解散なんやけど、ここまで自転車で来とるんよ。有紗は、バス?」 「うん。中央から乗ってきた」 「ごめんな、ここまで来るの大変やったやろ」 「全然。遠足気分で楽しかったもん。また明日、来るからね」 「あ、じゃあバス停まで送って行く」  その時、テニス部顧問の先生から集合がかかった。 「大丈夫よ。もうすぐバス来るから。また明日ね」 「わかった。今日はありがとう」  奏多たちは急いで集合場所に走って行った。私は、軽くなったクーラーバッグを振りながら、浮かれ気分でバス停に向かっていた。 「ちょっと。あんたが奏多の彼女?」  突然そう呼びかけられるまでは。
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