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凛々花さんはずっと奏多のことが好きだったのかもしれない。でもバカにしていた奏多を好きなことを周りに知られるのが恥ずかしくて言えなかった。
そしたら急に奏多がかっこよくなってきて、彼氏にしても自慢できそうだから付き合おうとして、断られた。それが癪にさわって無視させるようになったってとこだろうか。
「私を車に押し込んでどうするつもりだったんやろ……」
「わからない。そんな予定、全然なかった。今日は山岸の試合を見たいからってタツローが兄貴に頼んで車を出してもらっただけなんやけど……タツローはね、昔から凛々花が大好きで、常に言うことを聞く奴なんよ」
「また来ると思う?」
「来るかも。和辻さん、こんなこと言えた義理じゃないんやけど、明日はここに来ない方がいいと思う」
「ううん。行くよ。明日は大事なベスト8の戦いやもん。だから親に送り迎えしてもらう。犯罪には巻き込まれたくないから」
須藤さんは犯罪と言う言葉を聞いて身震いした。
「私、山岸にも今日、打ち明けて謝っておく」
「それはやめて! 明日は大事な試合なんやから。未遂に終わったし心配させたくない。試合が終わったら私から言うから」
「わかった……月曜日に学校で謝るよ」
バスが終点の中央駅に着いた。バスを降りると須藤さんは「私は別の路線に乗り換えだから」と言った。
「ごめんね、和辻さん。ありがとう」
もう一度頭を下げてから彼女はバス停へ向かって行った。
(やだな……今頃になって手が震えてる)
一人でいるのはなんだか怖い。私は改札に急いだ。
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