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32奏多Side 5
今日は最高の一日だった。坂口とのコンビネーションは抜群だったし、有紗の弁当は見た目も味も素晴らしくて、気分がめっちゃ上がった。
明日は絶対にベスト4に入りたい。そうすれば県大会に進むことができる。
(有紗、明日も作ってきてくれるって言ってたな……すげぇ楽しみ)
早く帰って身体を休めよう、と家の前に着いた時、誰かが立っているのが見えた。
(……凛々花だ)
途端に憂鬱な気分になる。また何か絡んでこようとしてるのだろうか。
凛々花はなぜか氷で頬を冷やしていた。そして「おかえり」と言う。
(何か構って欲しそうやけど……冗談じゃない)
軽く返事をして自転車を門の中に入れ、玄関に入ろうとした俺の腕を凛々花が止める。
「? なんだよ」
「これさ。タツローの兄貴に殴られた」
氷を外すと、確かに赤くなっている。だが腫れているというほどでもない。
「何があったか知らんけど、大丈夫か」
タツローといえば凛々花の舎弟みたいな奴だ。確か二つ上の兄がいたように記憶している。
「これ以上弟を巻き込むなってさ、女を殴るなんてサイテー。アホ高校とはいえせっかく入ったんだから問題を起こさせるな、とか言って。過保護やん。バカみたいよね」
正直、何が言いたいのかさっぱりわからない。タツローの兄の話が俺と何の関係があるんだ。
「俺明日早いから」
背を向けた俺の腕を取り、凛々花は尚も引き留める。
「ねえ。何であたしじゃだめなの」
「は?」
「別にあたしだっていいやん。あたしとは付き合わんって言ったくせに、何で彼女はいいわけ」
凛々花の顔は真剣だ。俺ははっきり言おうと決めた。
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