33夜空の星と後ろ姿

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 近所の人が犬の散歩をしているのが見えた。慌てて身体を離す私たち。 「家の前で抱き合ってたなんて言われたらまずいもんな」 「そ、そうよね。うちの母は喜ぶかもしれんけど」 「え、お母さんってそういうノリの人?」 「うん。なんかずっと乙女な感じ。明日は車で連れてってもらうから、もしかしたら奏多と話したいって言いだすかも……」 「あ、もしそうなったらぜひ挨拶したい。有紗や有紗の家族とは、最初からちゃんとしておきたいんだ」 「奏多……」  犬の散歩をしている人がうちの前まで歩いてきた。 「あら有紗ちゃんこんばんは」 「こんばんは」 「彼氏? いいわねえ若い子は」  ホッホッホと笑いながら通り過ぎて行く。 「あの人はそんなにお喋りじゃないから大丈夫。いい人よ」 「そっか」  奏多が時計を見た。もう帰らないと、眠る時間が少なくなってしまう。 「じゃあまた明日。……おやすみ」 「おやすみなさい。気をつけて」  自転車に跨り帰って行く奏多を見送った。星が瞬く夜空にその姿が消えていくまで。
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