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34母と顔合わせ
次の日。また頑張って作ったお弁当をクーラーバッグに詰め込んで、母の車で出発した。
「彼氏くん、会うの楽しみ〜。体育祭の時はまだ付き合ってなかったんだよねぇ? でもあのお姫様抱っこの子でしょ? イケメンだったからわくわくしちゃう」
母のテンションはめっちゃ高かった。奏多と会わせるのを躊躇してしまうレベル。
「お母さん、会うのは試合終わってからだからね。それまでは隠れててよ」
「はいはい。わかってますって」
今日は昨日の試合で出揃ったベスト8が準々決勝を戦う。奏多たち以外は全て二年生だ。
一試合目、かなりの接戦を制した奏多たちだけど、準決勝で惜しくも負けてしまった。
それでもその後の3位決定戦では勝つことが出来て、最終結果は第3位だ。県大会への出場も決まった。
「すごいわねえ、奏多くん」
母はすっかり『奏多くん』呼びで定着している。奏多、びっくりするだろうな。
全部終わって解散になり、奏多が走って来た。
「お疲れ様!」
声を掛けたけどどことなく緊張している。私の隣で母が手を振っているからに違いない。
「奏多くん〜、お疲れ様でした。上手だったわね〜」
「ありがとうございます。あ、あの、山岸奏多です。有紗さんとお付き合いさせていただいてます」
頭を下げる奏多に母はこちらこそよろしくね、と言い、車で待ってるからゆっくり話しておいで、と私の背中を押した。意外とあっさり引き下がったので私のほうがびっくりしてしまう。
「お母さん、有紗に顔が似てるな」
「そうなんよ。体型も髪質も全部そっくり」
「お父さん、有紗のこと可愛くてしょうがないんやない? 好きで結婚した女性にそっくりの娘なんて、想像しただけで萌える」
「あはは……そうなんよね。お母さんともまだラブラブやし」
これは本当にそう。恥ずかしながら父は母と私にめちゃくちゃ甘くて過保護だ。
「あ、今日の弁当も美味かった。ホントにありがとう」
「良かった。すごい練習したんよ。今までお弁当作ったことなかったもん」
「そうなん⁈ めっちゃ美味しかったよ。初めてとは思えん」
あまりにも奏多が喜んでくれたので、週に一回くらい奏多にお弁当作ろうかな、なんて密かに思っている。毎朝自分で作ってるって言ってたし、一日くらい楽させてあげたい。私もいつか一人暮らしをする時にお弁当を作る練習になるし、一石二鳥だ。
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