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35謝罪と文化祭準備
翌月曜日。昼休みに須藤さんが奏多のところにやって来た。
「山岸くん、嘘の噂を流して本当にごめんなさい」
周りの人にも聞こえるような声で。クラス中が注目していた。
「もう、しないよな」
「はい。反省してます。二度とこんなことしません」
すると奏多はぎこちなくはあるけど笑みを浮かべて頷いた。
「わかった。もういいよ」
「ありがとう、山岸くん」
それから須藤さんは、少し離れたところで奈津たちとお弁当を食べていた私のところにも来た。
「和辻さんにも迷惑かけてごめんなさい」
「須藤さん、ちゃんと言えて良かったね」
「うん。今朝、クラスのみんなにも謝ったんよ。驚いてたけど許してくれた。謝ったらだいぶ気が楽になったよ」
「やっぱり。良かったよ、ホントに」
微笑んで頷く須藤さん。
「それでね、昨日私凛々花のとこに行って、もう連絡しないでくれって言ってきたんよ。そしたら意外にもあっさり『わかった』って言われてね。あんなに怯えてた自分が何やったんやろ、と思て」
「そうなん……凛々花さんも何か考えることあったんかなぁ」
「別の同級生に聞いたんやけど、凛々花の取り巻きはもうタツローと私しか残ってなかったみたい。みんな高校でできた友達と遊び始めてて、いつまでも偉そうな凛々花とは遊ばなくなってたって……」
そうだったんだ。つまり凛々花さんは『裸の王様』状態だったってこと。そしていつのまにか誰もそばにいなくなっていた。
「そのタツローも今回のことで兄貴にすごい怒られたみたいで、もう凛々花とは遊ばないって言ってるらしいんよ。だからたぶんもう、和辻さんに何かしたりすることはないと思う」
「わかった。教えてくれてありがとう、須藤さん」
須藤さんはもう一度微笑むとペコリと頭を下げて教室を出て行った。
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