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36文化祭
今日は文化祭の日。午前中は体育祭での催しを見ることにしている。
まずは吹奏楽部の演奏だ。ワカがフルートを吹いているから絶対に見なきゃいけない。
その後いくつかの出し物があって、それから奏多たちのダンスだ。それが終わってから合流して二人で校舎内を回る予定。
「有紗、席取っといたよ!」
「ありがと、奈津〜」
いつもの4人で最前列に並ぶ。奈津の彼氏である緒方くんも奏多たちと一緒に踊るから、奈津の手には緒方くんの名前が書かれたうちわが握られている。
オープニングの吹奏楽部演奏は相変わらず素晴らしかった。さすが、コンクール入賞の常連だけある。ワカも真剣に演奏していてカッコよかったな。写真をバッチリ撮っておいたのであとで送ってあげよう。
そして……ついにお待ちかねのテニス部一年男子の出し物。K-POPの軽やかなメロディに合わせてテニスウェア姿で踊り始める男子たち。
「頑張れー、〇〇くーん!」
思ったより歓声が聞こえる。心配しなくてもテニス部は人気があるみたいで観客は多かった。
中でも坂口くんのファンは目立っていて、一年生だけじゃなく先輩女子もたくさんいる。
「きゃー! 坂口くん可愛いー!」
「坂口くん、こっち向いてー!」
背が高く顔も可愛く、勉強もできて優しい坂口くんだからモテるとは思っていたけれど、ここまでとは知らなかった。
坂口くんの下の名前である『文哉』と書かれたうちわが大量にはためいている。
負けてはいられない、と私と奈津は奏多と緒方くんに声援を送る。でもやっぱり、彼女持ちの男子には声が掛からない。
「それだけ、私たち彼女の存在が認知されてるってことよね」
「そうそう。山岸や健人(緒方くんの名前)がイケてないわけじゃないんやからっ」
そんな負け惜しみを言ったりして。
奏多は練習の甲斐あってけっこう上手に踊れていた。この様子は放送部が撮影してあとで販売してくれるから、必ず買わなくては。奏多は、恥ずかしいから買わないでくれって言うけどね。
無事にダンスが終わり、制服に着替えた奏多たちが控え室から出て来た。
「お疲れ様! 上手やったよ」
「すげぇ恥ずかしかった……もう二度とこんなことやらねぇ」
「来年は下級生が踊るのを見てればいいんやもんね。一緒にうちわ持って声援送ろう」
「そうやな。来年はもっと一緒におれるな」
そう言って笑う奏多にドキッとしながら私も微笑み返した。
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