36文化祭

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 その後のファッションショーはとても楽しかった。ショーのテーマは「ファッションで振り返るトレンドの変遷」。大正時代のモボ・モガから始まり昭和・平成から今に至るまでの流行を見せるというものだった。  モデルで出る人が多いせいか応援の観客も多く、保護者もたくさん来ていて体育館は熱気に包まれていた。 「あっ! あれ奏多じゃない?」  奏多が登場したのは80年代ファッションの時。チェッカーズのような服を着た人やおニャン子のようなパステルカラーのトレーナーを着た人たちが出たあと、『カラス族』と紹介されてステージに現れた。 (うわぁ、めっちゃカッコいいんですけど……!)  幅広で少し丈の短い黒のパンツを履き、襟の大きな白いシャツをパンツの上に出して重ねている。下のほうのボタンは開けていて、歩くたびにゴツいベルトがチラッと見えて可愛い。  シャツの上には黒のジャケットを着ているけれどシルエットは大きめ。袖を捲って白シャツを袖口から見せているのが全身黒のなかでいいアクセントだ。  足元は黒のいかつい編み上げブーツで、ボリュームのある服たちに負けていない。  髪を立たせてメイクを施された奏多はホントにモデルさんのようで、私は完全に魂を抜かれてしまった。 「山岸めっちゃ似合ってるやん〜。後で写真撮ろうね、和辻さん」 「うん、これは残しておかなきゃ!」  ショーは大成功に終わり、もう一度ステージに集合したモデルたち。惜しみない拍手に包まれ、制作した被服部の人たちも嬉しそうだ。  終わった後にその服を着た奏多と並んだ写真を坂口くんに撮ってもらい、次に奏多と坂口くんを撮って。最後になぜか私と坂口くんのツーショットまで撮った。 (ファンの子に知られたら大変かも) 「あ、もう一枚、最後に三人で」  坂口くんの提案で、三人の写真もパチリ。三人で撮るのは何気に初めてかもしれない。  イケメン二人に挟まれた写真は、家宝にしてもいいレベルだ。 「じゃああとは二人でごゆっくり〜」  いつものように手をヒラヒラと振って、坂口くんはどこかへ消えて行った。 「じゃあ、俺も着替えないと」 「また家庭科室だね。一緒に行く」  並んで歩きだすと奏多がふっと笑いをこぼした。 「……有紗のせいでこんなことする羽目になったけどさ、」 「あは。ごめんね。でもめっちゃカッコいいよ」 「やってみたら案外楽しかった。何でも試してみるもんだな」 「良かった! 怒ってなくて」  全然怒ってないよ、と奏多は私に手を差し出す。その優しい微笑みに嬉しくなって手を取り、ギュッと握ると奏多も握り返してくれた。 〜〜〜〜〜 ※明日が最終話になります。
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