37 最終話 クリスマスデート

1/4
64人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ

37 最終話 クリスマスデート

 時は流れ、街はすっかりクリスマス仕様だ。商店街の入り口には大きなツリーが飾られ、クリスマスソングが賑わいを盛り上げている。  今年のクリスマスイブは嬉しいことに日曜日。奏多の練習が終わったら、デートすることができる。  ……と思っていたのに、年内最後の練習試合が入ったんだって。しかも遠方。練習試合は朝から夕方までやるし、何時に帰ってくるかわからない。だから予定が立たないのだ。 (顧問の先生だってきっとクリスマスを家族や好きな人と過ごしたいはず。先生も可哀想なんだから恨んじゃダメ……)  そう思いつつも肩を落とす私。 「ごめんな、有紗。今年は23日にデートしよっか」 「謝らなくていいよ。奏多のせいやないもん。来年は、イブにデートできるかもしれんしね」 「来年も一緒にいてくれるってこと?」  奏多が上目遣いに私の顔を覗き込む。いつも思うけどその顔はあざとすぎる。イケメンなのに可愛いってどういうことなの、ほんとに。  いつものように手を繋いでの帰り道。最近は、少し遠回りして大きな公園のベンチに座り、少しお喋りしてから帰っている。電車一本遅らせるだけだけど、私たちにとってとても大切な時間だ。   「寒くなったよねえ」 「そうやなぁ。年が明けたらもっと寒くなるな」 「初詣も一緒に行こうね」 「もちろん。夜は出られるん?」 「うーん、うちは夜は無理かも……電車も動いてないし」  そうなのだ。私の住んでる町は最終電車が10時半、始発は6時。年末年始でもそれは変わらない。その時間に父が外出を許してくれるかというと……正直自信がない。 「じゃあ、元日の昼でええよ。元日がダメなら二日でもええし。有紗と行くのが俺にとっての初詣やから」 「ありがとー……」  奏多はいつも私の家族の事情を考えてくれる。一人娘でちょっと過保護な我が家、もっとみんなみたいに夜の外出もしたいのだけれど、こればかりはしょうがない。  来年はもう少し門限を遅くしてもらえるよう、母にも協力してもらって直談判するつもりだ。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!