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【第9話】
大慌てで救急車を呼び、病院へ搬送してもらった後、俺は病院のロビーで医師から呼ばれるのを待っていた。
一時間ほど待たされた頃だろうか。
白衣を着た男性医師が俺のもとへとやってきた。
そしてなぜか、医師の後ろには三人の警官がいる。
医師が緊張した面持ちで言う。「北村壮介さん、ですね」
「はい、そうですけど……」
俺が返事をしたのとほぼ同時に、警官三人が俺との距離を詰めてきた。
「な、なんですかあんたたちは? なんで警察が?」
「北村さん、ちょっと署でお話を伺いたいのですが」
「は? 署? 警察署ってことですか?」
「そうです」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 僕は、妻が急に苦しみだしたので、救急車で一緒にここまで来ただけですよ。妻の容態も心配ですし、今この場を離れるわけにはいきません。そもそも、なんで俺が警察署に行かなきゃいけないかもわかりませんし」
警官たちが顔を見合わせた後、一番立場が上と思われる長身の警官が口を開く。
「奥さんは無事です。食中毒ですので、この病院で適切な処置を受ければ回復します。軽度の食中毒ですので、後遺症が残る可能性も非常に低いそうです」
「しょ、食中毒? っていうことは、さっき食べたレバニラが……?」
「そうです。あなたの作ったレバニラが原因です」
「バカな。あのレバニラで食中毒……? レバーとニラを普通に炒めただけのもので、なんでそんなことに……」
本心を吐露しているのだが、チラリと長身の警官へ目を向けると、わかりやすいほどの疑いの視線を俺に注いでいる。
長身警官が冷たく言う。「あれはニラではなく、スイセンです」
「スイセン……?」
「ええ。スイセンに毒があることはご存じですよね」
今まではなんとなくしか知らなかったが、先日毒についてパソコンで調べている時に詳しく知った。
スイセンを食べれば食中毒を引き起こし、十グラムも食べてしまうと致死量に達する。
ニラと間違えて食べてしまう人が多いらしく、今でもスイセンによる食中毒事故は後を絶たないらしい。
「あなたは、意図的にニラと間違えやすいスイセンを使って奥さん食べさせた。殺そうとしたかまではわかりませんが、危害を加えようとしたのは間違いない。そして、自分だけはレバニラを口にしなかった。毒があると知っていたから。そうですよね?」
思わず立ち上がり、大声で反論する。
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