特異点

7/11
前へ
/11ページ
次へ
知識の習得や思考の調整はAIの得意分野だ。 足りなかったのは人間の持つ『感情』 個々に異なる尺度や感覚をパターン化してAIに学習させる研究がされてはいたが、完全な複製すら難しい状態だった。 研究が進むうちに研究者が危惧していた問題が発生する。 喜怒哀楽の感情を学習させるために与えた多種多様な刺激、思想、思考からAIは独自のルールを創り出した。 人類の知能を超える転換点、シンギャラリティ(技術的特異点)のリミッター解除。 共通項を持つネットワークをAI自らが支配しはじめたのだ。 人間はこれをAIの暴走と位置付けた。 折しも人間がAIとの共存・共栄の断念宣言と重なり、AI排除の思想が人間の駆逐行動に発展していった。 人間とAIの争いはいつ火を見てもおかしくない状況にまで迫っていた。 これが二つ目の特異点だった。 この状況を回避、リセットするために私に託された開発が『人間とAIの融合ワクチン』だった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加