特異点

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私はそれまでの『AIに人間の感情を理解させる』発想を逆転したのだ。 『人間にAIの機能を埋め込め』ば、AIの暴走を恐れることも人間を超える叡智を持つこともないと仮説を立てた。 人体が微弱な電波で機能していることは立証されている。 遠隔地から脳波でロボットを起動、稼動させる技術も進んでいたからこれを応用すればいいと考えた。 人体に取り込んだAIは個々人の体内電波を読み取り、思考・行動パターンとその時に生まれる感情を学習していく。 個々人の情報は記録され、膨大なパターンデータがコロニーと呼ばれるセンターに蓄積される。 AIを搭載した人体が増えれば増えるほど、基本情報が充実していく算段だ。 これを人体に悪影響を及ぼすことがほとんどなく、持続的な学習と情報収集、提供ができる状態を『ワクチン』として開発した。 ワクチンは天然痘ワクチンの『種痘』をモデルにした。 埋め込む場所は『額』。 第三の目があったと言われている場所だ。 額に米粒の10分の1程の規格のAIを埋め込む。 埋め込まれたAIからシナプスに似た『根』の様なものが頭蓋骨を覆い、骨伝導で機能する仕組みだ。 記憶や感情の制御、行動の抑制などの高度な精神活動を司っている前頭前野と相互関係を確立させるのだ。
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