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叶に促され、森下は椅子に腰を下ろした。
「薬は言われた通りに一日二回、食後に服用していました。でも、昨日は仕事でバタバタして、昼と夜に薬を飲んだんです。そのせいなのか、うとうとと居眠りしてしまって、起こしてくれた先輩に――うっ」
「先輩を口説いてしまったと」
森下の顔が真っ赤になった。恐れていたことが起きたらしい。
「一回の服用する量を少なくして、三回にするか」
叶はパソコンで薬の組み合わせ表を見て考え込んでいる。
「薬を飲んで、改善したことは?」
「悪夢は見てないです。たぶん」
「女性に対してはどうです?」
「辛い記憶が蘇って来ます」
ココロが森下を見た。
「ココロさんは医療従事者だからか平気です」
ココロは複雑な気持ちで笑みを作る。
「薬の割合を変えてみましょう。ミント味で」
「ハートの他はないんですか?」
機嫌よく飛行機形の薬を持って帰った。
「自分自身と向き合うには苦痛が伴うことがある。ここに来る患者さんはよくやってくれている。もちろん、森下さんも」
「今度は口説かなければ良いですけど」
「心配か?」
「それは、患者さんですし」
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