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「問題だって? 婚約者との婚約が解消したせいで、ふさぎ込んでいたり、物を投げて暴れていた姉が、ここに出入りするようになってから妙に穏やかになって、今ではすっかり仏様の風情に……あの気性の荒い姉が信じられない」
叶はさも当然とばかりに頷いた。
「処方薬がお姉さんに合っていたんですな」
「姉は、あんなに愛だの運命だの大騒ぎしていた男と別れてまだ一ヶ月ですよ! 薬を飲んだ途端、新しい出会いにも積極的で婚活パーティーに行こうとまでしてるんですよ!」
「……それの何が悪いんだ」
森下は信じられないと、叶を睨みつけた。
「それだけじゃない。なんなんだ、この法外な値段は! 詐欺じゃないのか!」
そう言い放ち、領収書をカウンターに叩きつけた。黙って見ていたココロも流石にこの言葉にはむっとした。
ココロが前に出ようとすると叶が、「落ち着け」と言わんばかりにポンポンと肩を叩いた。
「私が独自の研究で編み出した薬は、保険適用外なんですよ。それは、きちんと君のお姉さんに説明した上で処方しています。無理強いなど一度もしていない」
「だ、だが……大丈夫なのか」
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