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「どうぞ」
森下は警戒するように処置室を見回した。
「あの棚の瓶は? ずいぶんとカラフルな粉が入っている」
「私が開発した薬です。赤は活力を、青は冷静さ、黄は好奇心への刺激、色によって効果が違います。患者さんを診て、必要に応じた処方をしています」
「はあ」
「不眠症にチェックが入ってますね。あと悪夢をよく見るとのことですが、ご自身で心当たりがありますか?」
「――仕事が忙しいせいか、寝てもすぐ起きてしまったり嫌な夢でうなされたり。とにかくぐっすり眠りたいんだ」
「夢の内容は覚えていますか? よく夢に出てくる人や出来事など話せる範囲で、いかがですか?」
「話さないとダメか?」
「勿論、無理にとは言いません。ですが、お姉さんの様子を見て、もしかしたら悩みが解決するかもしれないと希望を持ってこちらへ来たのではないですか? 話して頂けたら、森下さんに寄り添った薬をお出し出来ますよ」
微笑んだ叶を見て、森下は肩の力が抜けたようだった。
「――昔、好きだった人や二年前まで付き合っていた人が夢の中で酷い言葉を」
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