甘く、苦い

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 詰まりながら話す森下を見て、ココロは自分が患者だった時の事を思い出していた。 「でも仕事が始まれば忘れられるんだ!」 「一度、深呼吸しましょう。はい、吸って、はいて」  森下は今までの辛かった恋愛話をぽつりぽつりと話し始めた。それを叶はパソコンに打ち込む。森下は話しているうちに色々と思い出したようで、興奮して時折りむせた。 「先生、森下さんは初診です。もっと日にちをかけて話を聞いた方が」  森下の話は過去へ遡り、幼稚園で意地悪な女の子達に何度も背中を押されて泣かされたと憤っている。ココロは、話し続ける森下と叶の好奇心を止める方法を考えていると、森下がしゃっくりを上げ始めた。 「森下さん、よく話してくれました」  叶がやっとパソコンから離れ、森下に向き合った。 「森下さん?」  森下はわなわなと震えている。己をさらけ出してしまったことに、恥ずかしさと怒りを覚えているようだった。  叶は森下の様子を観察し、棚から二つの薬瓶を取った。緑の自己回復薬とピンクの愛情薬のパウダーをそれぞれ半分ずつハートの型に押し込む。 「所長、その組み合わせは初めてですよね?」
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