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心配するココロを無視して、森下の方へくるりと向いた。
「森下さん、これを飲んでください。女性への悪感情を緩やかにし、安眠を妨害する悪夢も減らせるはずです」
森下がぴくりと動き、ハート形の薬をむずと掴むと躊躇せずに口の中に放った。薬は落雁みたいにすっと溶ける。
「森下さん?」
森下は気絶するように眠った。
目を覚ましたのはそれから二時間後だった。診察ベッドの上でぼんやりと天井を見ている。
「森下さん、具合はどうです?」
「君は――何て美しいんだ」
むくりと起き上がってココロの手を握った。
「所長! 森下さんが変です」
叶がカーテンをめくって診察室から顔を出し、二人を交互に見た。
「成功だな」
「どこがですか!」
森下はうっとりとココロを見つめている。
「気持ち悪いので何とかしてください」
「薬の副作用だな。面白い出方をするもんだ」
「メモしてないで」
叶は興味深そうに、二人のやりとりを見ている。
「ココロさん、僕と付き合いませんか?」
「人格まで変わってます」
「ははは。何を言うんです。おかしな方だ」
「即効性のない薬の組み合わせなんだがなあ」
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