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叶がモニターを見ながら頭を傾げた。
「これ、副作用なんですよね?」
ココロが手を離そうとするが力では到底勝てない。
「所長!」
「薬を飲んで二時間十分、そろそろだ」
「俺の手を放せ」
不愛想な森下に戻っていた。
「どっちが!」
森下は大きな伸びを一つし、すっきりした表情で叶に深々と頭を下げた。
「先ほどの非礼は許して下さい。さっき飲んだ薬が欲しい」
「なんか、言動にブレが……」
「ここまで薬の効果がすぐに現れるなんて、名は体を表すというか。少し気をつけて調合しよう」
薬を調合している叶を横目に森下にお茶を出す。
「久しぶりに悪夢を見ずに寝られた。それに心なしか、君に優しくしようという気持ちが芽生えた気がする」
「それは良かったですけど」
ほんの少し女性への敵愾心が薄れたという。
「まずますの結果だな」
森下の会計を見届けた叶は研究室に入っていった。
「これ何の味なんだ? 甘すぎるしハート型だし、人前では絶対に飲めん」
「バナナ味ですよ。お口に合いませんか? 叶の処方薬は、味付きなのが売りなんですよ」
「売り?」
「一般的な薬は無味か苦いものが多いでしょう。幼児の時はメイプル味とかイチゴ味とかあるのに」
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