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もともと、男に興味があったわけじゃない。
10代から20代前半までは、食えるだけ女の子を食いまくった。
バンドマンという立場があれば、たとえボーカルやギターなんて花形じゃなくても、メジャーデビューなんて夢のまた夢でも、ちょっと人前に出て大げさに夢を語るだけで、女の子は寄ってきた。
その時期があるから余計に、それを失った自分が惨めで、自棄になったと言ってもいい。
インターネットがあれば日本人でも外国人でも、熟女でも未成年でも、好きなだけ女の裸が見られる。
見られるのに、手では触れられなくなった。
それに気付いた時、画面に映っている顔の映らない男たちが自分のことを見下しているように思えてきた。
カメラの外では、ドヤ顔でマウントを取っているんだろうと。
自分も裸と性をさらして、他人が羨ましがるような女をよがらせている。自己顕示欲が満たされないはずがない。
そんな事を考えずに済む場所を探してたどり着いたのが、ゲイ向けのポルノビデオサイトだった。
男女のアダルトビデオサイトのバナー広告で存在は知っていたが、もちろんスルーしていた。何なら気持ち悪いと思っていた。
自分にはまったく無関係な世界。
そこに溢れていたのは、想像するのも気持ち悪いような、男同士のセックスだった。
男の裸、キス、性器が氾濫するサムネイル。どの動画を見ても映っているのは男、男、男だ。
初めはもちろん抵抗があった。
だけど、そのビデオは僕の中にある腐った欲望をぶつけるのにちょうど良かった。
人を見下したい。他人より優位に立ちたい。人前で出せば嫌われるけれど、誰しもが間違いなく持っている欲望だ。
容姿、学歴、年収、若さ、経験人数、知名度、才能……人に誇れる物を何も持たなくなった僕に唯一残っていたのは、「性的に異常じゃない」というステータスだけだった。
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