最終楽章

7/7
150人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
 これから演奏する『ニュー・ワールド』は出だしが大事。  厳かに、だけどかっこよく。聞いている人が、おもわず震えるような音を響かせたい。  目が合った楽くんが、唇の端を少しあげて笑顔を作る。  わたしも笑顔を返すと、楽くんと見つめ合ったままうなずいた。  それを合図に、わたし達は同時に浅く息を吸い込む。  鍵盤にのせた指先一本一本に、意識を集中させる。  これは、わたしと楽くんの初めての演奏のステージ。  わたしと楽くんの最初の一音が、静まり返った体育館の空気を大きく震わせた。 Fin.
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!