第六楽章

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 わたしだって、まりえちゃんがやったなんて思ってない。  ただ、もう二ヶ月以上も口をきいていなかったまりえちゃんが黒板の紙を剥すのを手伝ってくれるとは思わなくて、びっくりしただけ。 「もちろん、わかってるよ。手伝ってくれてありがとう。楽くんのこと、探しに行ってくるね」  わたしがお礼を言うと、まりえちゃんが目線をあげた。それから、ちょっとほっとしたように眉を下げる。 「うん。行ってあげて。明日の結衣ちゃんたちの連弾、楽しみにしてるね。わたしもわたしで頑張るから」 「うん、わたしもまりえちゃんのピアノ楽しみにしてる」  にこっと笑いかけると、まりえちゃんもにこっと笑い返してくれる。  ひさしぶりのまりえちゃんの笑顔とやさしさに送り出されて、わたしは二組の教室を出た。
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