第六楽章

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◇  学校の中をあちこち探し回って、わたしが楽くんを見つけたのは、体育館裏のウサギ小屋のそばだった。  ランドセルを背負ったまましゃがんだ楽くんは、冷たい風がふくなか、小屋のすみっこで体を寄せ合って丸まっているウサギたちをぼんやりと見ている。 「こんなとこにいたんだ……。音楽室に探しに行ってもいなかったから、ほかに楽くんが行きそうな場所が全然思いつかなくて。ずいぶん探しちゃった」  はあーっと息を吐いて、わたしも楽くんの隣りにしゃがむ。 「ここ、寒くない?」  ふだんどおりの声で尋ねたら、楽くんが「べつに」と首を横に振った。  ウサギ小屋のフェンスの向こうで、ウサギたちがときどき目を開けたり、口をもごもご動かしたりしている。
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