第六楽章

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「そりゃあ、楽くんがカンペキばっかり求めて怖い顔してるときはちょっとイヤだったよ。でも、楽くんて、もともとあんまり感情面に出さないタイプじゃん。だから、ピアノの音からも感情が伝わりにくいのかもしれないけど……。二ヶ月一緒に弾いてたわたしには、楽くんがひとつひとつの音に気持ちを込めて弾いてるってことがちゃんと伝わってたよ」  ひとつの悪口は、100個のほめ言葉よりも強いかもしれない。  だけどせめて、自分のことをよく知っている人からのほめ言葉は、顔を知らない人からの悪口なんかに負けないでほしい。  そんなふうに思ったから、わたしは楽くんの心が負けないように、自分が楽くんのピアノをどれだけ好きかってことをできるだけたくさん伝えようとした。
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