君とデュオ

第六楽章

「ピアノの音って、その人の性格が出るよね。たとえばまりえちゃんのピアノはやわらかくてすっごく優しい音がするし、楽くんのピアノはマジメでちょっと融通がきかなくて、でも透明で澄んだキレイな音がする。楽くんのピアノのいいところがわかんないっていう人たちは、まだまだ演奏を聞き足りないんだよ。わたしは、楽くんの演奏を何百回も聞いたからね！」

　わたしが大マジメ言ってフンッと鼻を鳴らすと、楽くんは大きく目を見開いて。なぜか、ぷっと吹き出した。

「なんで笑うの」

「べつに……。でも、ちょっと元気出た」

　マジメな話にどうしてこうも笑われたのかはわからない。だけど、元気が出たならよかった。

　わたしの言葉は、少しくらいは楽くんを傷付けた悪口に勝てたかな……。

「よかった。じゃあ、教室戻ろう。今日は昼休みの音楽室練習と午後からのリハーサルもあるよ」

　わたしは少しほっとすると、立ち上がって、楽くんに向かって手を差し出した。だけど楽くんは、わたしを見上げて悲しそうに首を横に振る。