第六楽章

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「春岡は、それがいいと思う。明日のフリーステージ、よろしくお願いします」  三日月形に目を細めた楽くんが、握手した右手にぎゅっと力を込める。  楽くんと手のひらを重ねると、寒さに冷えていた手先に温かさを感じた。 「うん、よろしくね」  わたしの言葉に、三日月形になった楽くんの目がさらに細くなる。楽くんのやさしい笑顔に、ドクンと胸が高鳴る。  それは、明日への期待かもしれないし。もっとべつの何かなのかもしれない。  心臓の音がドクドクと少し速くなっていくのを感じながら、わたしも楽くんに笑い返した。
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