最終楽章

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「顔、こわいんだけど」  体育館のステージの舞台袖。薄暗くて緊張感のあるその場所で出番を待っているわたしに、楽くんが小声で話しかけてきた。  音楽祭のプログラムは順調に進み。いよいよ、エントリーした六年生たちのフリーステージ。  くじ引きで決まったわたし達の出番は、プログラムの五番目。  ちなみに、わたし達の前の演奏者はまりえちゃん。スポットライトに照らされて、やさしく、やわらかな音を奏でるまりえちゃんのピアノは、この二ヶ月でさらにうまくなっている。  さすが、数日後にピアノコンクールの本選を控えているだけあって、まりえちゃんのピアノは鳥肌がたちそうなほどに完成度が高くてうつくしい。 「まりえちゃんのあとって……。プレッシャーすごいよ。わたしの演奏、大丈夫かな。見て、手汗やばい……」  暗がりのなか、じんわりと冷や汗をかいた両手を楽くんに見せる。 「本番弱いタイプなんだ……」  呆れ顔でわたしを見下ろす楽くんは、わたしと違って落ち着いている。  小さな頃からステージ慣れしてるっていうのもあるかもしれないけど、本番に強いタイプらしい。
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