最終楽章

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 きのうはウサギ小屋の前で泣きごとをもらしていたくせに……。 余裕ぶった態度の楽くんをじろっと見ると、わたしは汗ばんだ手をおろした。  きのうの朝の事件は、すぐに先生たちのあいだにも知れ渡って。六年生全クラスに楽くんの悪口を張り付けたのは誰かという調査が、わたし達生徒には知られないように行われていたらしい。  調査の結果は当事者の楽くんとお母さんだけに伝えられ、いやがらせをした相手からはいちおうの謝罪があったそうだ。  楽くんは、いやがらせをしたのが誰だったのかは教えてくれなかったけど。いろいろと心の整理がついたのか、今日は朝からすっきりとした顔をしている。  楽くんの首元には、わたしが胸につけているコサージュと同じ黄色のネクタイ。暗い舞台袖でも、明るい黄色はよく目立つ。  おそろいの色のアイテムをつけた楽くんの横顔を見つめていると、ふと振り向いた楽くんがわたしの左手をつないだ。
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