最終楽章

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「な、なに急に?」 「なにって、次出番だから」   汗をかいた手を握られたことに焦ってあたふたするわたしに、楽くんが冷静に答える。  大きな拍手の音が聞こえてきてステージを見ると、ピアノの前に立ったまりえちゃんが静かにおじぎしていた。  いつのまにか、まりえちゃんの演奏が終わっていたらしい。ステージの真ん中から、舞台袖に向かって退場してくるまりえちゃん。  まりえちゃんがこちらに近づいてくるにつれて、ドキドキと緊張感が増してきた。  舞台袖に戻ってきたまりえちゃんが、出番を待っているわたしににこっと笑いかけてくる。 「がんばってね」  まりえちゃんの応援の言葉。それが、またプレッシャーになってわたしの肩にのしかかってきた。  どうしよう。フリーステージの舞台が、こんなにも緊張するとは思わなかった。
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