151人が本棚に入れています
本棚に追加
「な、なに急に?」
「なにって、次出番だから」
汗をかいた手を握られたことに焦ってあたふたするわたしに、楽くんが冷静に答える。
大きな拍手の音が聞こえてきてステージを見ると、ピアノの前に立ったまりえちゃんが静かにおじぎしていた。
いつのまにか、まりえちゃんの演奏が終わっていたらしい。ステージの真ん中から、舞台袖に向かって退場してくるまりえちゃん。
まりえちゃんがこちらに近づいてくるにつれて、ドキドキと緊張感が増してきた。
舞台袖に戻ってきたまりえちゃんが、出番を待っているわたしににこっと笑いかけてくる。
「がんばってね」
まりえちゃんの応援の言葉。それが、またプレッシャーになってわたしの肩にのしかかってきた。
どうしよう。フリーステージの舞台が、こんなにも緊張するとは思わなかった。
最初のコメントを投稿しよう!