第一楽章

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「手を合わせてください。ごちそうさまでした!」  日直の号令で、給食の時間が終わる。  黒板の上の時計を気にしながら手を合わせたわたしは、「ごちそうさまでした」の「た」の言葉が終わるか終わらないかのうちに勢いよく椅子から立ち上がった。 「ごちそうさま」の前から重ねておいた食器を配膳台に置かれたカゴに入れると、机の中のクリアファイルをつかんで教室を飛び出す。  向かうのは、今日も隣の六年二組の教室。  後ろのドアから教室の中をのぞくと、給食の食器を片付け終えた桜井まりえちゃんが、わたしに気付いて駆け寄ってきた。  まりえちゃんは、わたしの幼稚園からの幼なじみだ。  目がぱっちりとした美人さんで、ピンク系の淡い色のお洋右服や、ふわふわしたお嬢様っぽいスカートがよく似合う。  まりえちゃんとわたしは同じピアノ教室に通っていて、クラスは違うけど仲がいい。
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