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エピローグ
綾人は俺と仲良くなるためだけに産まれ、生かされてきた。
それが嬉しいと思う反面、あの2人の思惑によるものだということが腹立たしく感じていた。
でも、今は違う。
綾人が生きる理由はもう俺のためだけだから。
「ごめんね······」
ねぇ、綾人。
何年後でもいいから、笑って俺の名前を呼んでよ。
俺、綾人の笑った顔が大好きなんだ。
もしもまた、俺に向かって笑ってくれたら──
「······やっときたね」
ポケットに入れていたスマホが振動し、俺は笑った。
綾人はいつの間にか眠っていたので俺はゆっくりとベッドで寝かせ、和菓子のゴミを片付ける。
「おやすみ、綾人。良い夢を」
部屋の扉を閉め、俺はベランダでかかってきた電話に出る。
「はい、新村です······」
ねぇ、綾人。
俺は諦めてないんだよ。
「······そうですか······はい、ありがとうございます」
絶対、あの願いごとを叶えてあげる。
「では、そのまま予定通りお願いします······ああ、それは別に構いません。聞いても意味なんてないので」
だって、綾人が笑ってくれるなら俺はなんだってできるから。
「それはもう、他人ですから」
俺はそう言って口角を上げた。
あとは綾人次第。
早く笑ってくれないかな。
約束するよ。
いつかちゃんと本物を見せてあげるって。
とびっきり、綺麗な桜をね······
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