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それから、マキとうなずき君は、よほど相性がよかったのか、どんなおしど
り夫婦よりもうまくいっている。
互いの親に紹介し、結婚式の日取りもトントン拍子に決まった。出会ってす
ぐに婚姻届を出したことはすぐにバレて一悶着あった。それも、なんとかうな
ずき君の人柄の良さとマキの愛敬によって騒動は収束した。
うなずき君の両親は跡継ぎを望んでいるだろうから、マキの四十歳という年
齢についてなにか言われるかと思ったがべつにそこはいいらしい。あっけなく
スルーされた。近頃は高齢出産も増えているし、まだまだいけるだろうと思わ
れているのかもしれない。なんと思われようと、マキに出産する意思はないの
で絶対に子供は産まないが。
そして翌年の秋の日。
マキとうなずき君は、結婚式を挙げた。
マキは変わらず気ままな一人暮らしで、うなずき君と純ちゃんは今も同棲し
ている。こんな状態だけど、いちおう世間的にマキとうなずき君は夫婦で一緒
に暮らしていることになっている。住まいは同じ市内だし、けっこうバレない
ものである。
新郎新婦の席で、小声で、二人は話していた。
「やっぱり純ちゃん、来てないね」
「うん、へそ曲げちゃってる。披露宴終わったら、そっこーで家かえるよ」
うなずき君は、こんなに人柄がいいのに信じられないけど、あまり友達がい
ない。学生時代はいじめやシカトいろいろあったそうで、大人になって出会っ
た純ちゃんが初めての友達であり、その後、初めての恋人になったという。
対照的に純ちゃんは社交的で、数えきれないほどの友達がいて、過去の恋人
は両手で数え切れないほど。
今は、うなずき君ひとすじで、わき目も振らない。遊んでいた過去を隠さな
いところも、うなずき君いわく、信用がおけるそうだ。
で、新郎側の友人の席には、今日は純ちゃんの友達がたくさん出席してくれ
ていた。
「それでね、純ちゃんもどうしてもおれと結婚式を挙げたいっていってきかな
くて」
「うへぇ、重婚じゃないの、それ……」
「うん、まさに不倫の極み……」
うなずき君は、そう言いながらもしあわせそうだった。
「でね、あまりにあいつ機嫌悪いから、もうブルーワンダーのシレーヌ城での
挙式、予約しちゃったよ」
「まじで!」
耳打ちされ、思わず立ち上がりかけた。ドレスの長い裾が足にひっかかる。
ブルーワンダーでの、夢の国の結婚式。追加料金を払えば、ペンギーとパニ
ーがお祝いに駆けつける。白タキシードのうなずき君と純くん。いいかも。う
ん、すっごくいい。
マキは、脳細胞のすみずみまで使って想像した。今日のこんな、ただ形だけ
の結婚式よりも、もっとずっと楽しい。
「参列してくれる? マキさん」
「純ちゃんが怖いから、やめとくわ」
想像だけで、胸がいっぱいになった。
同性婚が可能になったら、あたしは喜んでうなずき君と離婚しよう。
早く二人が本当に結婚できますように。
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