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告白の伝言
あれから時は進み、季節は流れていく。
俺は和哉と変わらず一緒だった。
あの時見たあの目は怖かったが和哉は基本温厚で優しい。
あれは俺の発言が間違ってただけで、和哉を怖がって離れるのはお門違いだ。
だから俺は相変わらず幼なじみ離れをせず、和哉といた。
中間・期末テストの対策で勉強を教わり、夏休みは受験勉強しながら息抜きで遊んだり。
最後の文化祭に体育祭、そして相変わらず和哉に英語をメインに勉強を教わる。
そして受験が無事に終わり互いに合格通知が届いたあと、前々から行きたいと2人で言っていたプチ旅行にも行ってきた。
もうすぐ卒業······そんな時期になる頃には俺はすっかり忘れていた。
和哉が俺に向けたあの冷たい目。
あれ以来和哉のそんな目を見ることはなく、いつの間にか俺はそんなことを思い出すことはなくなった。
というか、俺はあることに忙しくてそれどころではなかったが正しい。
そんなあることとは······
「好きです! 私と付き合って! ······って、新村くんに伝えといて」
「······」
放課後に体育館の裏に呼び出されて告白······の伝言を任された。
今月に入って何度目だよ······
「そんくらい自分で言えよ」
「だって三好から言ってくれたら、ワンチャン新村くんと付き合えるかもしれないじゃん。文句言わないで伝言くらい素直にやったらどう?」
「そーかよ」
女子の言葉にかなりイラッとするが悲しいかな、もう慣れた。
なにせ、新村はモテる。
どこのマンガの王子だよとツッコミたくなるほど、とても女子からモテる。
幼稚園の頃から現在まで万年モテ期。
まぁそのくせ歴代の彼女は1人もおらず、幼なじみからしたら逆に心配になる。
なにせ和哉曰く、赤の他人でしかない女より俺といる方が楽しいそうだ。
それでいいのか、和哉よ······
「言っとくけど、新村くんに彼女ができたら困るからって告白のこと揉み消したりしないでね。男の嫉妬は醜いよ~」
「するか! つーか、心配なら自分で言え!」
伝言を頼んだ女子はそう言い残してさっさと帰ってしまった。
男の嫉妬って······
現在学校では、なぜか俺が和哉を束縛しているというとんでもない噂が流れている。
前田からの情報だが、時たま1部の女子から睨まれるのでガチで信じている奴は多いんだろう。
束縛なんてしてない······よな?
多少の不安はあるが大丈夫だと信じたい。
俺たちがいつも一緒にいるのはもう日常──
「あ、あのっ!!」
「ん?」
振り返ると1人の女子が立っていた。
彼女は同じ美化委員の子で、毎週水曜日の昼休みに一緒に花壇の水やりをしていた。
だが3年は2学期の9月の後半から委員会をやめるので、彼女と話すのはかなり久しぶりだった。
「あ、あの私、三好くんに渡したいものがあって······」
俺は顔や耳を赤く染まった彼女を見てすぐにピンときた。
この子も和哉のことが好きなのか、と。
手には手紙が1通あるし、和哉に渡してほしいって頼みにきたんだろうか。
「なに?」
早くラブレターでも受け取って帰ろう。
和哉、下駄箱で待たせっぱなんだよな。
少しして彼女は覚悟を決めたような顔をし、俺に手紙を差し出した。
「い、1年生の頃から三好くんが······好き、でした······! よかったら、私とつ、付き合ってください······」
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