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無音の城
あなたが去って
幾年月か
剥がれたペンキの山
隠す手のひらに
埃色が美しい
沸騰するワード
拾う舌先
懐かしいコード
哀しみじゃなく
優しさをあげたい
最後だから
ほつれた髪を掻き上げる櫛の
鋭さで正気保つ裾の汚れた
下駄を捨てた彼女の足の親指が
内側にまるまったシーツに残す皺を
あなたじゃない誰かの記憶に
焼きつけて走る萎れた花として
実を結ぶことを拒絶した蜘蛛の雌
最後だから
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