1章

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 六日後、エミカはまた同じようにパソコンの前に座っていた。前回のセッションから今日までの五日間、わずかな期待を込めて何度か皆原のいるスーパーに立ち寄ってみたが、ほとんど皆原はいなかった。一度だけいたので、勇気を振り絞って彼のレジに並んでみたが、もう声をかけられることはなかった。やはりもうメロン柄のワンピースを着ていなかったからだろうか。だが、もう一度あれを着る勇気はなかったし、真顔でいつぞやの他人のように会計処理をしていく皆原の様子を見ていると、法凜の言うように本当に運気はなくなってしまったのだと理解せざるを得なかった。  法凜は本当にエミカのためを思った占いをしてくれる。もし、前回「メロン柄ワンピースを着続けて、アタックしなさい」と言われていたら、エミカは本当にそれをしたかもしれない。そうなっていたら、恥を巻き散らかし続けた挙げ句、ストーカー認定をされていたかもしれない。メロンストーカーとあだ名をつけられて、スーパー内のアルバイトに陰でいじられていたかもしれない。  危なかった。あれは、いっときのメロンだったから良かったのだ。背後を見る。空のソファがあった。今日は鈴は来ていない。前回来たときは「珍しいタイプの占い師だったね」と言い残して帰っていった。鈴もまた法凜が信用に足る占い師だと思ったのだろうか。  時間が来たので画面を見つめていると、いつも通り時間ピッタリに法凜は現れた。過去二回よりも真剣な表情に見え、やつれ果てているようにも見える。きっとエミカのために、この数日間は占いに明け暮れていたのだろう。  三回目の今日はどんなメッセージをくれるのだろう。エミカはこのとき、不安よりもむしろ楽しみな感情を抱いていたが、また想像もしていなかったことを言われるのであった。そしてそれを言う法凜の目は真剣だった。 「牛のキーホルダーを身に着けた人が、あなたの運命の人よ」
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