Epilogue

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Epilogue

それから二年。 私たちは三度春を迎えた。 大学構内にある桜並木の桜の花びらが風に吹かれて散っている。 新しい季節の匂いがする中、私たちは卒業式を迎えた。 式典は大学キャンパス内の広場で行われ、卒業生や教授陣が多く集まっている。 学長や教授陣の挨拶から始まり、個々に名前を読み上げられ、一人一人卒業証書を受け取るという長ったらしい式は数時間かけて行われた。 「桜狐、早くしろよ」 咲希が集合写真を撮ろうと私を手招きする。そこには小百合もいた。 あれから私たちは部長副部長会計として三人でサークルの運営を一年半勤め、現在は下の学年にその役割を任せている。が、その一年半でできた絆は強固なもので、今でも三人で遊びにいったり旅行に行ったりしている。 グループに共有された写真を見ながら、色々あったなあと大学生活を思い返す。 言うことを聞かない新入生に咲希がキレたり、愛衣先輩ほど人から好かれるカリスマ性を持ち合わせていない私に新歓は全然向いていなかったり、時期部長候補がなかなか現れなかったり。苦労が耐えないサークル運営だったけど、思い返してみれば全て美化されていて、楽しかったように感じてしまう。 結局私はあの後男と仲良くすることはなかった。 由良先輩を引き摺っているとかではなく、恋愛よりサークルのことをしている方が楽しかったから。 彼氏ができるのが早かったのは小百合だった。他学科のイケメン同期を捕まえて今も仲良くしている。 咲希は恋愛しては喧嘩して「あいつムカつく!」とキレて別れるを繰り返している。向いてないんじゃないかと思う。 全然男の気配がない私がつまらないのか、小百合と咲希は出会い系アプリ入れろ!だの相席カフェ行け!だの出会いを増やさせようとしてきたが、どれも結局やらずに大学生活が終わった。 一、二年生の時のようにセフレを作ることもなく、もはや膣が処女に戻っているような気すらしている。 一年生の時にやり捨ててきたチャラ男のことを思い出しても胸が痛むことはなくなり、もう完全に私は男への依存を卒業したのだと感じる。 そしてそう思った時に――ふと、二年前のあの約束を思い出したりする。 あれから伊月先輩からの連絡は来なくなった。 彼も彼で仕事を始めて新しいコミュニティに所属し、私のことなど今頃忘れているのだろう。 それを少し残念に思うあたり、私はあの時、多少は伊月先輩のことが好きだったのかもしれない。 今思えば変に意地張ってないで伊月先輩に乗り換えたらそれはそれで楽しかったかもしれないけれど、あの時の私は精一杯で、あれが一生懸命選んだ答えだったと思うと納得できる。あそこで伊月先輩に頼ってたら私はきっとここまで変われなかっただろうし。 「桜狐、今日の夜どこで飲む?」 小百合がそう聞いてきた。この三人で卒業後飲み会をするという約束をしているのだ。 私は「もう予約してるから、あとでURL送っとく」と伝えた。
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