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「ハハッ。きいちゃんらしいね。いいよ」
彼は煙草を消すと、台所からジッパー付の袋を取ってきて吸い殻を入れてくれた。
「はい。これが犯罪の証拠です」
「うん。ありがとう」
「でもこれ、俺も吸ったから共犯かな」
少しだけ悪い顔をして笑う紫雨ちゃんに、素手で心臓を掴まれた気がした。致命傷だ。
「そう、だね」
肉眼では見えないけれど、然るべきところで調べたらあたしと紫雨ちゃんのDNAが検出されるのだろう。二人で銜えた証。寧ろ、肉眼で見えたらいいのにと思う。
この世界は、見たいものほど見えないようになっていて、見たくないものほどよく見えるようになっている。
「足、出して」
自分の部屋から救急セットを取ってくると、紫雨ちゃんはあたしの足元に座った。Tシャツを着ていたのでほっとした。
「え、いいよ。自分でできるから」
「テーピングもできるの?」
「いや、それは無理だけど……」
だと思ったと笑い、紫雨ちゃんはあたしの濡れた靴下を剥ぎ取った。あ、と声を出す前に脱がされた。素直に恥ずかしい。ムダ毛とかにおいとか大丈夫だろうか。足臭いねって言われたら舌を噛み切ろう。
手際よくテーピングを終えると、結局膝の手当てもしてくれた。傷口に消毒液をかけたあと、沁みないようにふーふーと息を吹きかけられると、変な気持ちになった。くすぐったいような、気持ちいいような。
自分の変態性を垣間見た気がした。
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