387人が本棚に入れています
本棚に追加
「きいちゃんも着替えなきゃ、風邪引くね」
手当てを終えると、彼は言った。
「あたしは大丈夫。健康だけが取り柄だから」
「でも、ブラ透けてるよ」
「ええーっ?」慌てて体を隠したけど、そう言えば……。
「ブラしてないんだった」
「は? ノーブラなの?」
急に紫雨ちゃんが胸元を凝視した。
「そ、そんなに見ないでよ。冗談に決まってるじゃん。ハハッ」
基本的にブラトップしか着けないことは秘密にした。さすがに色気なさすぎ。
いつ何があってもいいように、毎日勝負下着を着けていると言っていた女性作家を思い出して、そういうことかと今ごろ納得した。よし、可愛い下着を買おう。
「きいちゃん、時々ぼんやりしてるからガチで忘れたのかと思った」
笑いながら、紫雨ちゃんはあたしに貸す服を探しに行った。ブラを着け忘れるなんて、もうぼんやりの域を超えていますぞ。
「いいの見つけた。これどうよ」
「わぁ、懐かしい」
胸元と腰元に『槇村』と刺繍された青いジャージ。中学の頃、盗んでやろうかと思うほど欲しかった代物だ。これは胸アツ。
「足痛いだろうから、着替え手伝おうか?」
「えっと……いやいや。結構です!」
一瞬冗談を真に受け、うまく交わせない自分が情けない。
「じゃあ、俺は向こうに行ってますから」
男性をどぎまぎさせられるようなダイナマイトボディだったら、見せてやるのに。あたしは、顔も体も平たい族なのだ。
彼が自分の部屋に行ったのを確認し、濡れたポロシャツを脱いだときだった。
最初のコメントを投稿しよう!