変態

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「きいちゃんも着替えなきゃ、風邪引くね」  手当てを終えると、彼は言った。 「あたしは大丈夫。健康だけが取り柄だから」 「でも、ブラ透けてるよ」 「ええーっ?」慌てて体を隠したけど、そう言えば……。 「ブラしてないんだった」 「は? ノーブラなの?」  急に紫雨ちゃんが胸元を凝視した。 「そ、そんなに見ないでよ。冗談に決まってるじゃん。ハハッ」  基本的にブラトップしか着けないことは秘密にした。さすがに色気なさすぎ。  いつ何があってもいいように、毎日勝負下着を着けていると言っていた女性作家を思い出して、そういうことかと今ごろ納得した。よし、可愛い下着を買おう。 「きいちゃん、時々ぼんやりしてるからガチで忘れたのかと思った」  笑いながら、紫雨ちゃんはあたしに貸す服を探しに行った。ブラを着け忘れるなんて、もうぼんやりの域を超えていますぞ。 「いいの見つけた。これどうよ」 「わぁ、懐かしい」  胸元と腰元に『槇村』と刺繍された青いジャージ。中学の頃、盗んでやろうかと思うほど欲しかった代物だ。これは胸アツ。 「足痛いだろうから、着替え手伝おうか?」 「えっと……いやいや。結構です!」  一瞬冗談を真に受け、うまく交わせない自分が情けない。 「じゃあ、俺は向こうに行ってますから」  男性をどぎまぎさせられるようなダイナマイトボディだったら、見せてやるのに。あたしは、顔も体も平たい族なのだ。  彼が自分の部屋に行ったのを確認し、濡れたポロシャツを脱いだときだった。
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